甘い匂いのするそれを受け取ると、先輩は「モテるなーお前」とため息をついた。
「…なんだ、こりゃ」
開けてみて思わず笑った。
…中身ははちみつレモン。
箱の裏には「yuzu」とサインしてあって。
「…直接渡せよ」
少し微笑んで、その甘いレモンを噛った。
――――なぁ。
何度も神様は俺に意地悪だったけど。
出会いも悲しみも、含めて運命だと言うのなら…
…俺はやっぱり神様を恨むことは出来ない。
かけがえのない…陸上に出会った。
走る幸せに出会った。
高校で出会った…隆史先輩や雄大先輩達、後輩達。
いつも呆れたような表情で俺を見守る拓巳。
…いつも俺の睡眠を妨げる、ALTのくそばばあ。
「晴れだぞ。良かったな」と半ばバカにしつつも温かいクラスメートの奴ら。