怖い。
怖いんだよ。なんだか分からないけど、凄く凄く…
「…っ」
切れた靴紐を付け替えるだけで、こんなにも手が震えるなんて初めてだった。
千切れた紐を、地面に置いて。
缶から取り出した新しい紐を、通す。
…蝶々結びをするのに、そこまで時間は掛からなかった。
「よし…!サンキュ、柚」
わざと声を張り上げて、靴を見たまま柚に缶を差し出した。
…でも、受け取られる感覚は感じなかった。
「柚」
「…」
…柚の小さな手に、缶を渡すと。
何の力も備わっていなかったせいでそれは地面へと滑り落ちた。
「…おい、柚!」