空、か…




「いーこと言うな。柚」


「でしょ?」




―――俺が空で



日向が太陽なら



…柚は星で。




遠いようで近い距離で、日向を見守ってる。



小さくも確かな、たくさんの希望を与えてくれるんだ。




「…今日は風がわりと涼しいな」


「うん」



柚の長い髪を結ぶゴムの飾りが、太陽の光を受けてきらっと光った。



茶色に近い髪が、オレンジ色に染まって見える。



「拓巳、走らないの?」


「お、靴紐結び直してから…」



そう屈んだ時、日向に目を遣った。



相変わらず奴は風のように爽やかにグラウンドを駆け抜けていて。



…そして柚は、それをまっすぐに見つめていて。



何も変わったところはなくて。




…俺は靴紐を、結び直した。