゙翻訳家゙。
…知ってはいた。
憧れてはいた。
だけどそんな職業…あたしなんかに出来るのかな。
「でも、難しい…よね?」
「そりゃな。でも難しいぐらいの方がやりがいあるだろ?」
日向らしい言葉に、あたしも微笑んだ。
…確かに。
「翻訳とかって、一種のセンスみたいなものも必要だしさ。…もちろん知識もいるけど、柚はセンスがあると思う」
「ひな…」
「やってみないことには分かんないけどな」
そう付け足してから、日向は軽く背中を反らして伸びをした。
「柚がやりたいと思うんなら、やってみればいいんじゃね?」
日向のくれた、小さな…だけど確かな、道しるべ。
それはあたしの未来に、はっきりとした光を与えてくれた。