「…本当だな。だったら腕の振り具合はさっきぐらいがちょうどいいってことか…」
0.2秒程上がった記録…ストップウオッチを見つめて、目を閉じた。
いつも想像する。
最高のコンディションで
最高のフォームで
最高の風に身を包んで
…柚の見守る競技場を、走り抜ける自分を。
「柚」
「…えっ?」
ストップウオッチを俺に手渡してから、嬉しそうに微笑んでいた柚は。
…我に返ったように、真剣な表情になった。
「何?」
「…今度の大会さ、俺…絶対に勝つから」
先輩達は、トレーニングに夢中で気付いていない。
今は誰も見ていない。
…俺のことも、柚のことも。