柚は小さく笑ってから、「あたしね」と続けた。



「小さい頃流れ星に三回願い事を唱えたら叶うって信じてて」


「…そんな話、あったな」


「そう。だから噛まずに三回言えるように何度も練習したの」



だけど、と軽く言葉を切った。



再び空を見上げる柚の瞳を、俺は見つめていた。



「実際に流れ星を初めて見た時びっくりした。…本当に一瞬なんだもん。三回どころか、一言発する間すらないぐらいに」


「あれ?今流れたっけ?みたいな」



俺も少し笑ってそう言うと、柚は微笑んだ。



「でも返って、宇宙の広さを知ることが出来たんだ。人間の歴史も多分…あの一瞬と同じくらい短いものなんだって」



その中で、一人の人間の一生とはどれ程短いものなんだろう。



一瞬、よりも短く。



…けれど、決して無にはなれなくて。