「あれ…さそり座かな。いや、違うか…?」



空は好きだけどあまり天文の知識はない。



今度勉強しようと苦笑いしつつ、懲りずに星を目で追い続けた。



「んと、あれは…」


「夏の大三角形。それぐらい知ってなくちゃ」



すっかり耳に馴染んだ、愛しい声がした。



…隣を見れば、暗い中でもはっきりと分かる柚の姿。



柚は靴を履いてから近付いてきて、俺の隣に腰を下ろした。



…そういやこいつ、地学だけは得意だったな。昔から。



「バカにすんなよ」


「べーつに?」



少し悪戯っぽく、笑ってから。



柚は「綺麗だね」と呟いて夜空を見上げた。



「なんか…宇宙の広さを感じるな」