生きるには狭すぎて
…生きる意味を探すには広すぎる。
そんな世界で、生き甲斐と呼べるに等しいものと出会えたこと。
…それは俺の、とてつもなく尊い奇跡だったのだと思う。
柚と、出会えたことも。
「…日向っ!」
息を弾ませて、満面の笑顔を浮かべた柚がこっちに駆け寄ってきた。
「タイム、上がってたよ!」
「…え、マジで?」
1秒のさらに0.1秒。
細かすぎる時間の粒と日々闘いながら、俺達は走っている。
柚は部員を一人一人瞬きも忘れる程見つめながら、一秒を見逃さないようにストップウオッチのボタンを押す。
…柚以上のマネージャーは、俺の知っている限りではいない。