「確かに彼…日向君はリハビリを頑張って、私も驚く程の回復力を見せた。
…だけどね、彼の足の損傷はあまりに大きかったんだ。
いつどこでどうなるのかは、私達にも分からないんだよ」
歩く許可を出した。
走る許可を出した。
…元通りの生活に戻る許可を出した。
それが先生にとってどれ程大きな決意だったのか、あたし達には計り知れない。
「だから…お願いしたい。
彼の歩きに…走りに、足にほんの少しでも異常が見えたら。
いつ、どこでもいい。
私に連絡をするように…約束出来るかな」
あたしに出来ることは、何でもするつもりだった。
…あの日、そう心に決めたのだから…
「はい。分かりました」
…全てが戻った訳ではない。
その言葉を繰り返して、今一瞬一瞬を大切にしていくことでしか。
あたし達の未来は…切り開けないんだ…