「"彼が君を覚えていなくても、君が彼を覚えていれば…きっとまた再会出来ると願うよ"
そう言ったんだよ」
「うん…」
「…俺、その言葉が無かったら折れていたかもしれない。
もう俺も、日向を忘れようとしていたかもしれない」
だから…凄い感謝してる。
拓巳はそう呟くように付け足して、緩んだマフラーを巻き直した。
冬の空は黒くても、そこにちゃんと星が見えるから安心する。
そう思っていると、拓巳も同じことを考えたのか…ゆっくりと空を見上げた。
「希望を与えられる人って…いいよな」
「希望…?」
「期待じゃなくて、希望。医者が患者に与えるのは…希望なんだってさ」
拓巳の吐く息は白く、冷たい風の中に消えていく。