日向がいつも…腰掛けていた机、を。
「何て…言いますかね」
拓巳がそう呟きながら机に触れた時、ふとあたしと目が合った。
「あ…」
「…なんで逸らすんだよ」
「そ、逸らしてないっ」
「はいはい」
笑う拓巳に、「もう」と膨れてから。
…あたしは、ストップウォッチを見つめた。
窓の外のグラウンドを見つめた。
白いラインで分けられたレーンを見つめた。
ゼッケンを見つめた。
…陸上に関わる全ての物を見つめる度に、その答えが痛い程に分かる。
日向がここにいたら…きっとこう言うだろう…
「…それでも俺は陸上に関わっていたい」