「え?」
振り向いた日向の目が、あまりに真剣だったから。
…少し、戸惑った。
「っ…?」
「…俺がさ」
「うん」
「今度の県大会で優勝したら」
「…うん…」
強く風が、吹いて。
…結んだはずの髪が、あまり意味がなくなってしまうくらい強く揺れる。
「っ…日向…?」
「…」
日向は言葉を紡ぐのを止めて、もどかしそうに唇を軽く噛むと。
「…柚」
柔らかく、あたしの名前を呼んで。
…指をあたしの頬に当てた。
「っ」
ドクン、と心臓が音を立てる。
日向…
…日向。
周りも、強く吹く風も、軽く舞い上がる砂も何一つ気にならないくらい。
…あたしの世界は、日向で満たされていく。