「柚」


「何ー?」


「帰れ。」


「なっ、ここまで走ってきたのに…酷すぎっ」


「俺はな、お前がいないと困るんだよ」


「ふんだ、どうせそうですよ…



…って……え…?」



ワンテンポ遅れて、俺の言葉を飲み込んだらしい柚の目が。



…大きく、見開かれた。




「ひな…」


「送ってやれなくてごめんな」


「…っ」


「気を付けて…帰れよ?」



窓枠に組んだ腕に、顎を乗せて。



…優しく、柚に微笑んだ。




「おやすみ、柚」


「…っ…



うん…!気を付けて帰るね。




…おやすみ、日向」




おやすみ。




…秋の夜空の下で、俺達が交わした。



温かな、言葉だった。