「…どうして、電話くれたの?」
「や、別に用は無いんだけど」
「…?」
「不意に、柚のバカな声が聞きたくなっただけ」
「なっ、何それっ」
「…冗談。」
無性に会いたくなった。
…それは言わなかった。
無性に抱き締めたくなった。
…それも言わなかった。
言いたくて、言えなかったこと。
それはたくさんある気がするんだけど。
…全部全部、願わくば想いのままで。
綺麗なままで、優しい君に伝わればいいと思う。
「…あ。」
「何」
「どうしよ…ごめん日向、携帯の電池切れそう」
「…充電してなかったのかよ」
「したつもりだったのに、朝見たらコンセント外れてて」
「バカ」
「どうしよ…
…あ。
ちょっとしばらく、窓の外見てて。いい?」
そう、最後に急いだ口調で言うと。
…返事も聞かないまま、電話がプツリと切れた。