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「…今でも、そう思う?」
「今でもそう思う」
カラン…とアイスコーヒーの氷が涼しげな音を鳴らした。
…薄い桜色のグロスを軽く塗った、綺麗な唇が静かに開く。
「…日向は、走るためにいなくなったんだ。って」
……アメリカ、カリフォルニア州。
西洋人で埋め尽くされた喫茶店で向かい合って話をする、二人の日本人がいた。
「でも…彼の足は…」
話を聞いていた彼女は、言いにくそうにそう眉をひそめた。
「…そう」
桜色のグロス。
さらさらとした、綺麗な髪。
…清楚な雰囲気を持つ彼女の話は、聞き手をすっかり虜にしていた。
「だけど…あたしは今でも信じてるんだ」
「でもね、柚」