「…ふーん」



気が付けば部員全員が、日向の話に釘付けになっていた。



「陸上は、いかに一秒一秒が大事かを思い知らされる。


…走ることは風になることだって、思い知らされる」



走ることは風になること。



…風になる瞬間、俺は生きてるんだって感じる。




いつか、日向の口からそう聞いたことがあった。



「…俺、多分陸上が無かったら生きていけないですよ」



少し悪戯っぽい目を上げて。



…だけど確かに真剣な瞳を、日向は隆史先輩にまっすぐと向けた。



「そっか。



…たまにはいいこと言うな!お前」



先輩は静かな雰囲気を破って、だけど温かく優しい笑顔を浮かべた。



他の部員も、自然と暑さを忘れて笑顔になっていた。



「よし、次の大会に向けてもう一頑張りだ!」