「…え…?」


「記憶を失うということがどんなものなのか…私達には分からない。



少なくとも日向は、私達には分からない苦しみを持ってる」



おばさんは涙を溜めた目で、あたし達を見つめた。





「だから…ごめんなさいね。



日向が望むまで…日向が会いたいって言うまで。



もう会いに来ないで欲しいの」






日向を誰よりも愛してるおばさんだからこそ、出せた答えだった。



だから誰も…何も言えなかった。






でもあたしの中では、小さくて脆い何かが壊れてしまったような気がした。




「日向を忘れて下さい」






…そう言われたような、気がした。