その幸せを、その感覚を知らないのだから。
…だから"不幸"だとは思わなかった。
すぐ目の前にいる彼女を思い出せないことの方が、よっぽど辛かった。
「ひーなた」
「こんちわー」
「…あ、どうも」
正体不明のこの"先輩達"は、気を遣ってるのか…柚と重ならない時間帯にやってくる。
部活は何をやっているのかは不明で、教えてくれない。
ただその体つきからして運動部であることは間違いないと思う。
「…あの」
「ん?」
「どうして、何部かは教えてくれないんです?」
三年生が引退したために部長になったらしい"雄大先輩"は、ベッドの隣の椅子に腰掛けた。
「…口止めされてるから、ってのもあるけど」
「え…?」
「日向に、答えを見つけて欲しいから」