その時、雲が月を隠したのか、教室内がさらに暗くなった。

もうイッペー君の姿はほとんど見えない。



もう何がなんだかわからない。

怖くて怖くて。

だけど何が怖いのかもわからない。

見つかるのが怖いの?


ううん。

きっとそれだけじゃない。


イッペー君に握られたままの手首の痛み。


暗闇だからこそ感じる息遣い。

それから体温……。

香水とタバコの香り。


その全てがあたしに意識させる。

イッペー君が男の人なんだということを。


――ドクンドクン。


こんな危機的状況なのに頭は別のこと、考えてる。



このまま永遠に、闇に隠されてしまいたい……

イッペー君の熱を感じていたい


なんて思っている自分に気づいて、カッと頬が熱くなる。


――ドクンドクン。


体の芯が熱い。


あたし……おかしいよ。



やだ……。

こんなのヘンだ……。

どうしよう……。