「あー。もぉ、お前、またいらんこと考えてるやろ! そういうんちゃうからな。もう、昔の話やって! この話はオシマイ!
はいはい、閉店、ガラガラ~」


イッペー君はカーテンを引く。


薄いクリーム色のカーテン。

さっきよりは暗くなったものの、月明かりはカーテン越しに教室に届く。


「ほらっ。もう行くで!
こんなとこで泣き顔の女子生徒と一緒におったら、オレどれだけ言い訳しても誤解されるやろうな」


スタスタと歩きだしたイッペー君の足が止まった。


口元に人差し指をあてて、振り返った。


「サクラ……ちょっと黙っててな……」


その顔があまりにも真剣だったので、あたしも息を殺して身構える。


耳を澄ますと、かすかに聞こえる。


廊下をパタパタとせわしなく歩く音。


その音がだんだん大きくなる。

こっちに近づいてきてる。