大きな満月が空に浮かんでいる。

黄色……というよりは銀色に近いような妖しくも美しい光を放つ。

輪郭がぼんやりしていて、その周りを囲うように丸い虹色の線が見える。

雲が月の光を反射して白く輝く。

空の色もいつもより明るく見えた。


月明かりに照らされたイッペー君の横顔をチラりと盗み見る。

陰影がはっきりしてて、なんだかいつもより大人っぽく見えた。

長い睫毛が影を作る。

肌の色が白く見えて、どこかの国の王子様みたい。

男の人の顔を見て“キレイ”……なんて見とれたのは初めてで


ドキドキが止まらない……。


――ああ。静まれ、心臓。


このドキドキに気づかれないようにと、無意味にはしゃぐ。


「つっ、月をこんなにちゃんと見たのって久しぶりかも。
あ……! あれだよ! 小学校の理科の授業で、月の満ち欠けを観察したの以来だ」


「月の満ち欠けなぁ……あったあった。懐かしいなぁ」

って、イッペー君はいつものごとくのんびりした口調で返事をする。


緊張してるのはやっぱりあたしだけみたい。


なんとなく沈黙が怖くて、あたしは必死に話題を探す。


「5年前の文化祭ン時も、月、キレイだった?」


「え?」