キンモクセイの香りが鼻先をかすめ、

秋風がセーラーのリボンとスカートの裾を揺らす、そんな季節。


校内は文化祭ムード一色に染まっていた。


最終日の後夜祭。

日が沈んだグラウンドに生徒達が集まる。


うちの高校恒例。

全校生徒による花火大会がまさに行われようとしていた。

といっても、打ち上げ花火みたいに派手なことをするわけでもなく。

各自が手持ち花火で楽しむだけのことなんだけど。



「はい、愛子! 花火ゲットしてきたよ!」


うれしそうに小走りで近づいてきた芙美が、あたしに何本かの花火を手渡す。


「ありがと……。てか、いいの……?」