「あたし……先生が好き……だよ」


言った瞬間、しまったと思った。

判断を間違った。

足……踏み外した。


震える唇を慌てて手で覆った。

でもその手もカタカタと小刻みに震えてて、冷たくて……。



うるさいぐらいのセミの声に、いっそかき消されていればいいのに……と本気で願った。

だけど、向かい合って座るあたし達。

声が届いていない……なんてこと、あるはずもなく。


イッペー君はきっとわかってた。

だって、あんまり驚いたような顔してない。



「あー……」


頬杖ついたまま、ライターの蓋をカチカチと開けたり閉めたりしている。


あたしの中には後悔が渦巻いて、いっそここから消えてしまいたい……そんなことばかり考えていた。