何か……さっきから会話が、ちょっとヘンだ。


細いラインの上でバランスを取りながら話してる。

そんな感じ。


右足……左足……どちらを出すべきか。

間違って足を踏み外したら、真ッ逆さまに落ちてしまいそう。



イッペー君は何を探ろうとしてるの?

ううん。

きっともう、あたしなんてどうあがいたって、イッペー君の手の内に落ちてる。


そういうことだよね?


――ドクンッ

って心臓が高鳴る。


中庭の木々の緑に光が反射して

空気がゆらゆらと揺れて見えて……

まるで現実感がないようなそんな気分になってきた。


だからなんだ……きっと。

今あたしは熱に浮かされてる。


全てを夏の暑さのせいにして……あたしは口を開いた。



「せんせ……」


「んー……?」



「好き」