「なぁ」

「はい?」

「サクラは、オレのこと絶対に『先生』って呼ぶなぁ」


「え……?」


「なんで?」


じっと見つめられて、息が止まるかと思った。

心拍数が上がる。


「理由なんて……別にないし」


そう答えるのが精一杯だった。


「ふーん……」


イッペー君はライターの蓋をカチカチさせる。


「あー……外、暑そうやなぁ……」なんて呟きながら。



少し息苦しくなってきた。


指先すら触れていないのに。

イッペー君は言葉だけで、あたしの心に踏み込んで、体を熱くさせる。

まるで、温めたナイフをバターに突き刺すみたいに。


じわじわと溶かしていく。