「特にないけど……」


「うっわっ。さっみしー。高2の夏やでー! ハジけなあかんやろ!」


口元に手をあてて、バカにするようにププって笑うイッペー君。


――殴っていいですか?


「恋をしろ! 恋を!」


からかうように楽しそうに笑ってる。


ヒトの気もしらないで。


なんとなく手持ち無沙汰になって、あたしは髪を指に絡ませる。


「恋なら……してるもん。片思いだけども……」




しばらく続く沈黙。

イッペー君はまた視線を窓の外に向けた。

セミの声がやけに耳につく。


――暑い。


シュルシュル……って髪が指の間から零れた瞬間。

イッペー君の声が耳元で聞こえてきた。