サクラが下の名前としてインプットされてるならば、ひょっとしたらフルネームなんて頭の片隅にも入ってないんじゃないか。

って、そんな気がした。


なのに……


「愛子」


イッペー君は何食わぬ顔して、即答。


あたしはポカンと口を開けてしまう。


「愛子、やろ?」


もう一度呼ばれて、心臓ドキドキ……。

だって、あまりにも優しい声でそう呼ぶから。



そんなあたしのドキドキに気づくはずもなく、イッペー君はニカッて白い歯を見せて笑う。


「愛子ちゃん♪」


ち……“ちゃん”なんて……簡単にそんな風に呼ばないで欲しい。


イッペー君のバカぁああああ。

もう、頭はショート、心臓は破裂寸前。

もし今死んだら、死因欄には“キュン死”って、ぜひそう書いて欲しい。