「やろ? オレ、あの日、めっちゃ朝早く来てしまって、職員室おってもすることないし。
ここでボケ~として時間つぶしててん。
そしたら、あそこに同じようにボケ~ってアホ面(ヅラ)で立ってる女子コーセーがおってな」


「ちょ……アホ面ってまさかあたしのこと?」

「うん、超アホ面やった。口、ぽっかーん開けて」


自分の口をポカンと開けて、おまけに白目むいて、ヘンな顔するイッペー君。


「ひどっ。あたし、そんな顔してないし」


イッペー君の肩のあたりにグーパンチをお見舞いする。

だけどイッペー君はそれをひょいっとよける。

あーもぉ。

マジむかつく。


「あはは。冗談冗談。ウソやでウソ。可愛い子がおるなぁ……って見とれててん」

「ウソばっかり。もう、いいよ!」


プイッとむくれるあたしにかまわず、イッペー君は話を続ける。


「そん時な。誰かが、『サクラ!』って呼んでん」

「え……」