「イッペー君はイッペー君じゃんね」


後ろの席の女の子達がクスクス笑ってる。


イッペー君、完全になめられてますよ?



イッペー君は教師1年生。

あたしたちは高校2年生。



その2年生もあとちょっとで終わる。


頬杖ついて、窓の外を盗み見る。

男子が「雪合戦したい」なんて言ってるのも、よくわかる。


昨夜ドカンと降った雪が中庭一面に積もっている。

この街にこんなに雪が降ることはかなりめずらしい。



この雪が溶けて

気温が上がって


蕾が膨らんで


やがて

桜の木がこの中庭いっぱいにピンク色の花びらを降らす頃、

あたし達は3年生になるんだ。



そう、桜が……

サクラが…ね。



「――サクラ。おーい、サクラ」


へ? あたし?


ポンと教科書で頭を叩かれたあたし

咲楽愛子(サクラ・アイコ)。


只今、イッペー君に片思い中の17歳。