イッペー君は軽く頭を振って、フーと大きく息を吐き出すと、あたしに背を向けて歩き始めた。



あたしもそれについていきたいんだけど。

さっきから膝がガクガクと震えたままで、上手く歩ける自信がなかった。


どうして?

さっき……イッペー君、あたしにキスしようとした?


なんでなんで?

ああ……頭が混乱する。


ドキドキしながら、用具入れの後ろから出て行くイッペー君の背中を見つめていると

イッペー君は、ふいに立ち止まって、振り返った。


「そうや。お前、ガム食ってへんやろ?」


「へ?」


突然そんなことを言われて戸惑う。


たしかに、今もそのままカーディガンのポケットに入っている。


でも、なんで……。