「あのクセ、うちのお兄ちゃんはね……。
いつも困ってる時にやるんだ。
先生も困ってたんでしょ? あたしと二人っきりになった時、いつもカチカチさせてたもん。あたし、ずっと先生のこと困らせてたんだよね。だからね……あたし……」


スーっと息を吸い込んで

あたしは言葉を探すの。

以前食堂でイッペー君が話してくれたことを思い出す。



重要なのは……

『相手の意図を汲み取って、最善の答えを導き出す』

こと。



そう。

だからあたしはイッペー君が望む最善の答えを出すんだ。



「あたし、もう近づかないし、困らせないから。
今は無理でも、先生のこと諦める努力するから……。
みんなと同じ、普通の生徒でいるから……だから……。
あたしが今まで言ったこと、全部なかったことに……忘れてくれていいから」