キッチンで冷蔵庫の中を覗きこんでいると、リビングの方からお兄ちゃんの声がした。


「だからさっ。ちげーよ!」


見れば、ソファに座って、携帯を耳にあてている。


「や。どっちが大事とかそういう問題じゃねーだろ?」


あたしは冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、リビングの方にいって、お兄ちゃんの近くに座った。


お兄ちゃんは電話しながらも、空いた手でライターの蓋を開けたり閉めたりカチカチしてる。


――イッペー君と同じクセ。


「もー……困らせんなよ」


そんなことを言いながらもライターをカチカチ。

それから最後に「ごめんな……」と謝ってから電話を切った。


そして、パチンと閉じた携帯をソファに投げ出して、フーと大きなため息。



そんなお兄ちゃんにあたしは声をかけた。



「薫(カオル)さん?」