イッペー君に抱きかかえられたまま、あたしは国語準備室に連れて行かれた。



ソファに横になると、


「ちょっとここで休んでて、すぐ戻るから」


そう言い残して、イッペー君は出て行ってしまった。



記憶に残っていたのは、そこまでで。


またいつの間にか眠っていたあたしは、体に伝わる振動に気づいて目を覚ました。


革張りのシートに横たわっている。


強い芳香剤の香りとエンジン音に包まれる。


あたしは車の後部座席に寝かされていた。




「すみません。真崎(マサキ)先生」


助手席の方からイッペー君の声がした。