「ああ」と呟いてから、イッペー君はなぜかちょっと楽しそうに目を細める。


「国語嫌いなヤツってみんな同じこと言うなぁって思って。で、数学とか物理嫌いなヤツは『こんなこと勉強して社会で役に立つことあるんか!』って文句言うやろ」

「うーん。たしかに」

「実際、高校で学んだことが社会に出て直接役に立つかっちゅうたら……まぁ、そうでもないんやろうけど」

「そんなこと先生が言ったら身も蓋もないじゃん」


イッペー君てヘンな教師だ。


「あんなぁ。
ぶっちゃけると、オレらが教えてんのは、受験で使うテクニックや。
作者の気持ちなんて作者にしかわからへんねん。だから、お前らが考えるんは、出題者の意図や。これは、どの教科でも言えることやけど――」


イッペー君は指でトントンとテーブルを叩く。

その指が細くて長くてキレイだなぁ……なんて、あたしはまたちょっとずれたことを考えていた。


「って、おい、聞いてますかー?」