窓の外の桜の木が目に入る。


あの木に花が咲き誇っていた時、イッペー君に出会った。


若葉が眩しい頃に、二人で食堂で話をした。


雨の季節に、空き教室で高校時代の話をしてくれた。


真夏の教室で、サイダーのアイスキャンディーを二人で半分コした。


月夜の晩に、一緒に線香花火をした。


星が瞬く冬の夜、風をきって自転車二人乗りした。


どんな場面もあたしの胸に今も鮮明に焼き付いている。

イッペー君の言葉、どれ一つ、零さないように、大事に記憶している。


ポケットの中にはガムとのど飴。

小さな、小さな宝物。


そんなもの全てを


無駄だなんて言わないで……。