「まさか。オレ、思いつきでしゃべってるだけやし」


イッペー君はあたしの手から“牛乳屋さんのコーヒー(ホット)”を抜き取って、代わりに自分の“牛乳屋さんのコーヒー(アイス)”をあたしの目の前に置いた。

そして内緒話でもするかのようにスッと顔を近づけてくる。

その距離にまたトクンて胸が鳴る。

イッペー君て、距離のとり方間違ってるよ……。

あたしは気づかれない程度に、体を少し仰け反らせた。


「ほんまはな。間違っただけやねん。アイス買うつもりやったのに、間違えてホットのボタン押してもーてん。ヤバって思った時には、もうホットが注がれてるし。背後からサクラの視線チクチク感じてるし。ここは先生らしくせな! って、思いながら何気に焦ってた」


「あははっ。何それー? 余裕なさすぎっ」


ひとしきり笑った後、あたしはイッペー君が取り替えてくれた、“牛乳屋さんのコーヒー(アイス)”を口にした。


「ねぇ、先生?」

「んー?」

「さっき、なんであんなに笑ったの?」

「へ?」

「あたしが国語嫌いな理由言った時」