音のする方へ視線を向ける。

あたしの予感は当たっていた。



つくづく思う。

――なんて正直なんだろう。

あたしの心臓。


イッペー君の姿を見た途端、

「好きな人が来たよ!」

って体全体に伝える警報機みたいに、勝手に暴れだす。


静まれ心臓。


実はあたしは、こういうシチュエーションが苦手だった。


イッペー君と廊下ですれ違うのが。

嬉しいという感情以上に緊張の方が大きい。


なんて声をかけたらいいのかわからない。


仲の良い友達だったら

「オッス」とか「ヨッ」とか「バイバイ」とか

いくらでも言葉が出てくるのに。