芙美の言葉をかみしめながら、じっと上履きを見つめていたあたしは、「でも……」と、顔を上げた。



「あたしが難しく考えすぎなのかもしれないけど……。
“とりあえず付き合う”って、相手に失礼じゃないのかな?」


「そうでもないよ?」と芙美は肩をすくめた。


「多分、今の菊池はどんな形でも愛子が自分を受け入れてくれたなら、喜ぶよ。
んで、時間をかけてでも、自分を好きになってもらう努力をすると思う」



芙美の言葉は的を得ていた。


自分に置き換えてみればよくわかる。


例え100%の愛情でなくても、もしもイッペー君があたしの方を向いてくれたら、あたしはきっと尻尾を振って喜んじゃうだろう。

少なくともその瞬間は。


もしも、あたしに好きな人がいないなら、“とりあえず”菊池君と付き合ったとしても何の問題もないかもしれない。


だけどあたしは今イッペー君が好きだ。


他の人を想いながら、“とりあえず”付き合ったとして……。



それで誰が幸せになるんだろう……。