「ねぇ……芙美と小久保君て、どっちが告ったんだっけ?」


「んー? うちらはなんか曖昧なんだよねー」


「そうなんだ……」


「うん。好きになったきっかけって特になくてさ。
たまたま男女何人かで遊びに行った時に、帰りの方向が同じだから……って送ってくれて。
んで、そん時に『つきあってるヤツいるの?』みたいな話になってね。
それで『いない』、『じゃ、オレらつきあう?』みたいなそんな軽いノリで」


「じゃ、付き合ってから好きになってったの?」


「うーん。まぁ、そんな感じかなぁ。でも、顔もタイプだったし、言われて悪い気はしなかったよ」


「うーん……コホッ」


「嫌いじゃないなら
“とりあえず付き合ってみる”……っていうのも、アリだと思うよー」


「だいたいさー……」と、芙美はキョロキョロと周りを見渡す。


廊下はテストを終えた生徒達であふれかえっていた。

今から下校デートでもするのか、カップルで歩いている子達もたくさんいた。


「この中に“お互いに100%の愛情を持ったカップル”ってどれぐらいいると思う?」


「100%の愛情……」


「みんなどっかで折り合いつけてんだと思うよ? やっぱ一人はさみしいからさ。彼氏欲しいじゃん」


「うん……」


「かっこいいとか、背高い、とか面白いとか、場合によっちゃぁ、金持ってる……とかさ」


「うん」


「それだけでも、充分“付き合う”ことの理由にはなるんだよ」