「先生、ガムありがとう」
日誌を机の上に置きながらお礼を言った。
「ああ。噛んだ?」
「うん。噛んだ噛んだ」
ウソ。
ほんとは今もポケットの中に入ってる。
だって宝物だもん。
「ふーん」
イッペー君は満足そうに口元を緩ませて、日誌を開く。
だけど、今日のページを見て、「なんやこれ!」って叫ぶ。
あたしはイッペー君の描いたイラストに点数をつけていた。
“15点”って。
さらに、“残念。もっと頑張りましょう”ってメッセージも添えて。
「マジ? 15点? バリバリ赤点やんか」
「つか、厳しすぎへん? 納得いかへんねんけど……」ってブツブツ呟くイッペー君。
「だって、こんなヘンな顔じゃないもん。加藤剛」
「そしたらお前も描いてみろやー」
ちょっとムッとした感じで
胸ポケットにさしていたシャーペンを取り出してあたしに差し出す。