「後夜祭の時、菊池、愛子のこと誘いたかったみたいだよ?」

「え……」

「でも、アイツ軽音楽部だからさ」

「あ、そっか……」


そう言えば、後夜祭の最初の曲を演奏していたバンドで、菊池君はギターを弾いていた。


「自分のステージ終わって愛子のこと探してたみたいなんだけど。愛子いなかったでしょ?」

「え? ああ……うん……」


あの日のことを思い出して、頬が熱くなる。

あの時、あたし、イッペー君と二人で空き教室にいたんだよね……。



「もう、2年も終わりじゃん?」

「うん……」

「さすがに3年連続同じクラスは難しいだろうし。受験もあるし……。それまでに決着つけたかったんじゃないかな」



芙美に言われて気づく。


そうだよね。

3年生になれば、また環境が変わるかもしれないんだ。

この教室で毎日顔を見ていた。

そんなことも当たり前でなくなる。


菊池君とも芙美とも……

そしてイッペー君とも。



「まぁ、そういうわけだからさ」


芙美はイチゴ牛乳のパックを放り投げる。

――カタンッ

そんな音をさせて、パックはゴミ箱に吸い込まれた。


「どうするかは愛子の自由だけど。話だけはちゃんと真剣に聞いてやってよ」



少し間を空けて


「うん」と頷いた。