菊池君の席はあたしの右斜め後ろだ。



『放課後、教室残ってて』


その言葉を思い出して、顔が熱くなる。


「あ、ありがと……」


菊池君の顔をまともに見ることもできず、ペンケースを受け取ると、慌てて席についた。


「もう、何やってんのー」


芙美が振り返ってクスクス笑う。


うう……最悪。

なんで朝からこんなに恥ずかしい目に合わなきゃならないんだろう。

もぉ帰りたい……。



「ふーい。じゃ、今日の日直は時代劇マニアのサクラで――」


教卓の方から、いつものようにのんびりした声が聞こえて、慌てて顔を上げた。


見ればイッペー君が日誌で肩をトントンと叩いている。