黙ったままの菊池君の顔を覗き込む。



――キーンコーン……

予鈴の音が響く。


だけど菊池君はいっこうにその場から動こうとしない。


どうしても今言いたいことがあるのかな。


うーん……なんだろ。

あ……ひょっとして。



「大岡越前?」

「はっ?」

「昨日、見たよー! 木村君ちで! もう、ほーんと良かった~。やっぱ、いつ見ても大岡越前の“おしらす”は最高だよね。名裁きだよー」

「や、そうじゃなくて!」


あまりにも大きな声で否定されたので、肩がビクって震えてしまった。