タバコを咥えたまま「何?」って顔を覗き込まれてハッとする。


「あ、あのね……」


胸に抱えていたものを差し出した。


それはバレンタインに渡せなかったチョコレート。

いかにもそれっぽいラッピングだから、イッペー君もすぐにわかってくれたと思う。


「あっ、あのっ。重く思わないでほしい。もちろん手作りじゃないし。ヘンな念とか込めてません!」


「ヘンな念って……」


ブハっと吹き出すイッペー君。


「なんていうか……お礼です。家まで送ってもらったから。それだけだからっ!」


もう、顔も見れない。

うつむいて早口でまくし立てる。

迷惑じゃないかな……。

困らせてないかな……。

って、ドキドキする。


すると、スッと手の中からチョコレートが抜き取られた。