あたしはふいに空を見上げた。


「先生?」

「んー」

「今日は星がキレイだよ」

「おー。ほんまやなぁ」



夜空の下、イッペー君と自転車二人乗り。

あたし、今、日本で一番幸せな女子高生かもしれない。

――なんてね。

あ……またポエムってしまった。


「なぁ、寒くないかー?」

「うん、平気」


冷たい風が頬にあたる。

でも火照った顔の熱を冷ましてくれるようで、ちょうど心地良かった。


「先生が風除けになってくれてるから大丈夫」

「そ」


怒られちゃうかな。

ドキドキしながら

――コツンッ

って、頭を少し傾けて、イッペー君の背中にもたれさせてみる。


一瞬ちらりと振り返ったイッペー君は何も言わず

ただ黙ったまま、ずっと自転車をこぎ続けていた。