「ちょっ……ポエマーって……お前、声でかっ」


「あたっ……あたしなんか、好きって自覚してから、ずっと頭の中ポエムばっかだし。一人で勝手に暴走しちゃったりしてるし。妄想とかすごいし。頭ン中だれかに覗かれたら、相当痛い子だと思われるだろうし……。
おまけに1%も可能性ないのにっ。振られたのに。それでも、ずっと好きで……好きで……。でも、どれだけ好きでも……絶対無理で……ヒグッ……」


いつの間にか涙がポロポロ流れていた。


「ちょ……咲楽……?」


「無理ってわかってるけど……諦められなくて。
ねぇ、そういうのわかる? つか、わかんないでしょ、木村君には。わかんないから、そんな風に簡単に投げ出したりするんだよ!
あたしから見れば、両思いとか……つきあうとかって……グスッ……すごいことだと思う……。そのチャンスが……チャンスが目の前にあるのに……それを見過ごすことはかっこいいことでもなんでもないよ。本音でぶつかるのは、かっこ悪いことじゃない!」


あたしは木村君の後ろに回った。


「『I LOVE YOU』の答え……今言わないでいつ言うんだっ!」


そして鞄で背中をパシンと叩く。


「あー、もぉ! 行ってこい! このドアホ!」


木村君はあたしを振り返った。


「あーもー。うるせーな。お前がそこまで言うなら行ってくるわ! つーか、アホアホいうなっつの!」


口の端を上げてニヤリと笑うと、聞き取るのが難しいぐらいの小さな声でつぶやいた。

「サンキュ」って。



そして走り出す。

木村君は足が速いから、きっとすぐに彼女に追いつくだろう。


彼なりの不器用でかつ繊細な『I LOVE YOU』が……


どうか彼女に伝わりますように。