「すっげっ!」


イッペー君の席の近くにいた木村君が、突然大きな声を上げた。


「あ、こらこら。勝手に触らなーい」


木村君が覗き込んでいた紙袋をさっと取り上げるイッペー君。


「何?」


って感じで不思議そうな目を向けていたあたし達に、木村君が教えてくれた。


「チョコが大量に入ってた!」


ああ……きっと先週のバレンタインのチョコだな。


イッペー君が生徒に囲まれている姿をあたしも見かけてた。

あたしも用意はしていたんだけど、結局、渡すことができなかった。

あたしからのチョコは重過ぎる気がしたから。


「イッペー君、1個もらっていい? オレ今、チョコ食いたい! つーか、餅でくるんで、チョコ餅にしない?」


紙袋に伸びた木村君の手をイッペー君はパシンッとはたく。


「これは持ち帰って、オレが1つ1つ大事にいただきます。可愛い生徒からの愛情が詰まってるからね」


「よっく言うよ。一週間もここに放置してたくせに。絶対、チョコの存在忘れてただろ」


木村君の突っ込みに、ギクリと顔の表情を変えたイッペー君。


――あ、図星。

この人ってホント、ウソつくの下手。