「サクラ……」


イッペー君が急に振り向くから、あたしは慌てて顔を両手で覆った。


「わ! もぉ、恥ずかしいって……。あたし、ポエマーだよね、ポエマー! なんかテンションおかしいよ。ありえないし。だって……月が……月がすごくキレイだから。だから、こんなんなっちゃうんだよ。ほらっ、月の光って人を惑わすって言うじゃん」


なんだかわけのわからない発言してる。


イッペー君はしばらく黙って……それからフッと息を吐き出した。


「お前……なんかすげーな。つーか、オレ……生徒になぐさめられてるってどんだけ? ほんま教師失格やな」


そう言って、ガクッと頭を下げたかと思うと、胸のあたりを押さえてブツブツ呟く。


「けど、このタイミングで言われるとなぁ……オレ今ちょっとヤバい」




「大丈夫?」って顔を覗き込もうとしたら、イッペー君はハッとしたような表情をして顔を上げた。