イッペー君はパッと顔を上げた。


「だめ。こっち見ないで。はずかしいから」


あたしは前に宣言した時と同じように、イッペー君の顔をぐいっと押してあたしの方を見せないようにした。



「指が好き」


「え……?」


「黙って聞いてて!」


「はい」


「声も好き。大きな目も。笑った顔も。すねたとこも。子供みたいにはしゃぐとこも……。先生らしくないとこも。能天気に見えて落ち込みやすいとこも。時々ずるいとこも。高校時代に好きだった女の子のこといつまでも引きずってる……情けないとこも……。ぜんぶ、好きだよ。先生が丸ごと好き」

「……」

「先生のことこんなにも好きな子がいるんだってこと、覚えてて。
もしも……もしも、またどうしようもなく落ち込んだら、今言ったこと、思い出して。
それでちょっとでも勇気付けられるのなら……あたしのことなんかいくらでも利用しちゃっていいよ?」


「……」


「あたし、先生の同級生なら良かったな。先生、高校生の時もずっとツラかったんでしょ? あたし……その頃の先生の……力になりたかった」


途中からなんだか目の奥が熱くなって……。

じわぁ……って涙がたまる。


夜で良かった。

昼間だったら、いくら涙を我慢しても真っ赤な目ですぐバレてしまうから。



声が震えないように

息を整えて

最後の言葉を言う。





「先生は、あたしの光なの……」