「うん」


一瞬、口をつぐんだイッペー君。

しばらくライターをカチカチさせてから、また口を開く。


「あの補講の日の前日。アイツが結婚するって話を聞かされてん」


「えっ……」


「ほんま言うと……。あの日は結構ダメージ受けてた」


ハハッと力なく笑う。


「あんまり自覚してなかったけど、かなり落ちてたと思う。で……サクラの口から聞いてみたかった。『オレのこと好き』って。誰かが自分のこと好きでいてくれたら、少し浮上できるような気がして……。だからわざとカマかけた。ごめんな、意地悪して」


「そうだったんだ……」


「ほんまごめん。オレ……サクラの気持ちわかっててやってんから……最低やな」


そこでイッペー君は口をつぐんだ。


しばらく沈黙がつづく。


あたしはすーっと息を吸い込んでから、今の気持ちを正直に話すことにした。


「……いいのに。利用しても」


「えっ」